■時事ネタコラムvol.16 「新年度スタート ―新入社員への入社の辞―」

■時事ネタコラムvol.16 「新年度スタート ―新入社員への入社の辞―」

2019年4月1日 0 投稿者: 大橋資博

 私が今籍を置いている事務所は9月決算で新卒採用も行っていないので4月が新年度という印象は無いのだが、世の中では4月1日に新しいスタートを迎えるという会社が多いであろう。入社式を行う会社もたくさんあるだろうが、そこで新入社員たちが社長をはじめとした会社のしかるべき立場の人間から入社の辞をいただくであろう。大企業ともなればその入社の辞を作成するために、事前から担当部署が草案を練って、その草案に対して社長の周り(役員や秘書役)にいるメンバーが校正を施し、ようやく当の本人である社長の目に入れていただくと、そこでまたガラッと変更指示が出たりして、、、、。それはそれはてんやわんやで作成していることが多い。もちろん社長自らが作成する場合もあるが、それはそれで対応が非常に大変である。社長が話したい内容が、これまで新人に向けて担当部署が言ってきたことと齟齬があったりするとあまりうまくないからである。そこで、社長にご機嫌を損ねずになんとか手を入れていただいたりするために、なだめすかして説明を行ったりする。

 そんなドタバタの裏事情を新入社員が知る由もなく、ようやく日の目を見ることになったとっておきの入社の辞の生存期間はセミの一生のように短いものである。自身も振り返ってみれば、1995年ということもあって阪神淡路大震災についてのことが話されたであろうが、内容は申し訳ないことに記憶していない。ただ、その後に行われた懇親会で、当時の九段下にあった本店の窓から、役員のどなたかに「この景色を見ることは当分ないだろうから見納めに見ておけよ~!(笑)」と言われたことはいまだに記憶している。実際その通りで銀行の本店勤務にはならなかったわけでお見事なのだが、そもそも会社自体が合併してしまい、そのビルは本社ではなくなってしまったわけだが・・・。
さて、私も研修という場ではあるが、新入社員に対して会社を代表してメッセージさせていただく機会がこれまでにあった。そのときに必ず入れていた要素がある。一つが「機会を活かすも活かさないも自分次第」、もう一つが「自分のためではなく全体のためかどうかを大切にする」ということである。もちろん、時代背景や当時の組織環境に応じたテーマをその都度入れこんではいたが、この2点は常に入れていた。


前者で言わんとしていたことは、言い方を変えれば受け身でビジネスをやっても面白くないよ、ということである。会社人生では不公平なことも多いかもしれないが、意外とチャンスはそれなりに公平に存在していると思っていて、それを自分から触りに行くか行かないかで結構違ったキャリアライフになるものである。そもそも同じ会社に入ってきた人間は同じような選考過程で選別されたわけで、個々のポテンシャルにそれほど大きな差があるわけではないと思っている。それぞれの特性はそれぞれに武器になっているはずであるだから、せっかく持っている自分なりの特性を、何かの機会に活用してあげて欲しい、という思いである。


 後者はネガティブに捉える人もいる。「今はそういう時代じゃない」と。意図があまり伝わりづらい言葉なのかもしれないが、何も滅私奉公せよとか、会社のために我慢しろ、ということを言っているわけではなく、せっかく入った自分の会社を成長させて欲しいということである。会社の人間が誰も会社の成長を目指していない会社なんて、当然会社としての強さもないし、仕事もつまらない、魅力のない組織であろう。会社を好きになることがもちろん望ましいが、好きにならずとも会社をゴールに導くために何が良いのかを考えて、力を注いでほしいと思う。そしてそのために自分をフル活用せよ、ということである。
 社会に出るときにどのような道を選ぶのかは自分次第であるが、企業に就職していわゆる組織に属する道を自分が選んだのに、会社より自分、という考えに私は違和感を持っている。もちろん、会社が間違ったことをしていいわけではないし、自分の考えを持つなというわけでもない。自分の道に責任と自信をもって取り組み、人のせいにしないで欲しいということである。
冒頭に書いたとおり私の言葉がその後も新入社員に残っているとは思わないが、その言葉がその瞬間はどのような形であれ届いて、スタートを切るビジネスパーソンへの追い風となっていると信じている。