■時事ネタコラムvol.12 「早期選考の功罪 ―インターンと採用活動―」

■時事ネタコラムvol.12 「早期選考の功罪 ―インターンと採用活動―」

2019年2月26日 0 投稿者: 大橋資博

 いよいよ3月から採用活動の一環としての企業説明会が解禁となり、名実ともに就職活動が本格スタートする。
少し前の日本経済新聞や本日付の朝日新聞の記事で、採用に直結したインターンに関する記事が出ていた。日経には、早期選考により2020年卒業予定の大学生の2月1日時点の内定率が既に8.1%で昨年を3.5ポイント上回っているという記事が出ていた。記事内で、ディスコの調査ではそのうちの67.6%がインターン参加企業から内定を得たと回答したとしている。インターンに参加した企業側から早期選考の案内が来たとの学生のインタビューの言葉も紹介されており、これらを踏まえると、学生の就職活動においてインターン自体が採用選考の性格を帯びていることが分かってくる。
 そこで毎回のように話題とされているのが、早期選考は学業への影響があり、学業軽視につながるのではないか、という主に学校側からの警鐘である。しかし、ここにきてついに政府が採用に直結するインターンを禁止するよう要請を出すという。ただあくまでも要請にすぎず何ら拘束力はないため実効性は乏しいものになるだろう。


私は以前のコラムでも書いたが、就職活動の時期を一定の枠に絞り込む必要はないと考えている。企業側は自分たちのやり方で自分たちの欲しい学生を取る活動を行えばよいし、そして学生側にも就職活動で企業を選ぶことに一定の責任を持たせることも大切だと考えている。採用活動は欲しい学生がどのような学生であるかを示し、就職活動を行う学生がその企業に行きたいと思って双方がマッチするのであれば大学2年の夏であろうが、大学4年の冬であろうが内定を出せばよいし、そのような形で学生を確保したい企業があれば、そのような採用活動を行えばよい。ただそうした場合、企業側にどうしてもリスクが大きくなる。つまり、早くから人材確保が出来ていることで安心していたにもかかわらず、入社直前に採用を辞退されてしまうと、それから人を探すのでは間に合わないというリスクである。今のルール上は内定に学生を拘束する力はほとんどの場合認められないので、早めに内定を出していても複数の内定を掛け持ちしている学生がどこを選ぶのかは自分たちでコントロールしきれないからである。そこで学生側にも内定を持つということに何らかの責任を負わせるべきだ、というのが私のかねてからの考えである。学生も自分たちの動き、考えに企業側が合わせてくれるのであれば、自分たちの側にも責任が伴うことくらいは覚悟のうえであろう。


さて、インターンの仕組みがこれほど普及したのは最近になってからで、非常に良い仕組みだと思う。だいたい40歳前後以上の方は自身の就職活動を振り返ってみて欲しい。入社前にどれだけ企業のことを知っていただろうか。上場企業であればまだしも、非上場の企業のことを知りたいと思ったら何が出来ただろうか。企業側と学生側の間の情報格差は激しく、今の情報量と比較するならば学生はほとんどが「イメージ」で企業選びを行っていたに近い。それを少しでも解消しようと行っていたのはOB訪問である。インターネットが無かった時代は企業のことを知るためにはそこで働いている人から聞くことが一番の近道であり、精度の高い唯一の情報であった。ただOB訪問で知ることが出来るのは、その会社の数少ない一人の意見であるし、自分にとって知り合いや何らかの縁を持つ場合が多いので、比較的良好な情報だけが選別されて与えられてしまう。ただ、中に入ってからその会社の様々な面を知り、自分でも努力、工夫を重ねて会社になじんでいくプロセスは悪いことばかりではない。
かたやインターンは異なる。仕事の進め方、雰囲気、人となりなどリアルに近い情報を自分なりの判断で分析することが可能である。企業側にしても仕事をさせてみることを通じてその学生の仕事をするときのモノの考え方や手の動かし方、人とのコミュニケーションの取り方が分かる点で大変有効な機会である。これを採用選考に使わないという方がむしろどうかしているというものである。インターンが採用選考に関係すると知ったら、その企業に行きたいと思っている学生は学問をおろそかにしてでもこぞって希望企業のインターンに行くことを優先してしまうのだろう。それは想像に難くない。

大学は在学後のキャリア形成が有意義になるよう学生生活を充実させて学生を導き支える存在であり、その方法は学業を筆頭にして就職支援やマインド形成など多岐にわたっている。してみれば学業をおろそかにして就職活動をする学生に対して、活動に対抗する措置をとるという考え方は当然おかしいのであり、むしろ必要なことは、インターンに向けた準備や相談への対応によるバックアップ体制の充実を図ることである。もっと掘り下げて言うのであれば、将来的にインターンをどのタイミングかで行う学生に対して、そのために大学時代に自分たちが学業面でなすべきことを理解させて取り組ませることである。インターンをやるから学業がおろそかになる、という考え自体が何か違和感を覚える。
学業がおろそかになるため採用とインターンを分けろ、と言っても法律違反ではない限り企業が自粛することはないだろう(表面上はやったとしてもこれまでの就職協定と同様の結果に陥るだけである)。しかし学業をおろそかにしている学生=大学の成績が悪い、勉強をしていない、という発想ではなく、社会に出る準備期間をおろそかにしている学生と捉えれば、そのような学生を取りたい企業はよっぽど人材を見る目がない企業であるため、企業側も学生側も結果をもって自分たちの行動を省みることになるであろう。