第3章 研修体系 ―センターラインから固める―

第3章 研修体系 ―センターラインから固める―

2019年1月11日 0 投稿者: 大橋資博

今回から具体的な研修の作り方にも触れていきたい。
研修を作るにあたっては研修体系を構築することから始めるべきである。前項で述べた人材開発体系は人材の活用方法まで含めて経営視点から捉えたもっと上流視点で作るものだが、研修体系は研修を組み合わせたロードマップであり、それをもとにして年間の研修計画を策定するベースとなるものである。研修体系はその会社が社員に対して「この会社内のキャリアでどのような知識やスキル、人材開発経験を与える(社員からすれば受ける)ことになっているか」を示したものである。ある程度の人数規模があって階層別に組織が構成されている企業であればあるほど活用されやすい。そして言うまでもないことだがその会社のキャリアパスと連動していることが必須である。
大きくは「階層別研修」「職能別研修」に分けることが出来て、さらに社員自らが必要に応じて自身の成長のために選択できる「機会提供」型の研修が三本柱と言える。その中でも研修体系を作る際にまず何から着手するかというと、階層別研修における「センターライン」の確定である。例えば家の中でも広く物を支える重要な柱として支柱という言葉があるように、会社でも支柱となるべき役職がある。フラット化組織やティール型組織を目指す場合は別だが、まだまだ一般的な階層型組織における研修では「トップマネジメント―管理者就任時―新人」をセンターラインとして設定するのが良いと考える。この柱が出来ていることで人材ツリーが力強いものとなる。


人材育成の目的が知識やスキルの付与のみにあらず、会社が社員に会社としてのメッセージを伝えることや社員の状態の把握にあることは既に述べたとおりであるが、その為にキャリア形成の節目の段階で、横串を通せる人材を集める階層別研修を用いるのは非常に有効な方法だと言える。

つまり、
 ①ビジョンの共有(会社と対象社員との間で)
 ②そのビジョンに向けて達成すべきミッションの設定
を落とし込むために、人を引っ張る立場(トップマネジメント)、人の育成と経営活動の初期(初任管理者)と会社に溶け込む段階(新人)で研修を行うことを意識して研修体系を作るとよいということである。

この中で新人や管理者に対する研修を行う会社は数多くあるが、トップマネジメントを鍛えることを怠る企業は多い。大企業になればなるほど、トップマネジメントは「既に仕上がった人」という位置づ

けにされてそれ以上のストレッチを会社側が放棄してしまっている。当人が自分自身でさらなる成長欲求があったり、常に外から学ぶ姿勢があったりすればよいが、文字通り仕上がってしまうとなかなかそ

ういうことにもならない。トップマネジメントはビジョンの発信者であり、経営の責任者でもある。この立場にある人間は、社内外を問わず絶えず様々な角度から目を光らせて注目されているのであり

、会社にはより優れたリーダーたるべき人材としての「育成」(もちろん知識を教え込むような座学研修を指しているわけではない)が求められると私は考える。特に日本企業においては「経営者育成」というものが根付いておらず、長い期間をかけてある一定の経験を経て残ってきた人の中から最適な人物を選ぶ方式が多いため、なおのこと経営リーダーとして必要な、市場と対話する能力であったり、大局観で物事を考える経験に乏しい側面がある。したがってトップマネジメントになった人材を強化するための施策が必要であると考えるのである。
もう一つのポイントとして、センターラインの3つの階層は、他の階層以上に入り口での人物確認を重視すべきであるという点である。それぞれの階層で求められるべき人材要件があるだろうが、ここを間違えてしまうと会社の支柱が腐ってきて、組織は綻び始める。管理者は昇格審査であり、新人の入り口は言うまでもなく採用活動である。管理者が部下社員をスポイルする話はいくらでも挙げられるだろう。その原因の一つは安易な管理者昇格にあると私は考えている。管理者管理者というけれど、「管理者と定義づけること自体が時代遅れで、自分で自分の仕事の範囲を決めて自律的に動くのが新しい働き方だ」という意見もあるだろうが、実態としては大企業を中心に階層と役割で組織をコントロールしている企業がほとんどであろう。管理者は部下社員をはじめとして影響力を与えることが出来る立場であり、そこに相応しくない人間は周囲にも悪影響を及ぼすため、1人の損害では済まないのである。

センターラインというが、では他はどうなのかというと、極端に言えば実施しないでも会社の人材成長が途絶えるわけではない。ただ、会社によっては役職に応じた役割定義が明確であったり、権限が定められていたりする場合もあるため、そのような場合は役割認識を落とし込む意味でも階層別研修を実施することは意義がある。

センターラインとは支柱と述べたように、その企業において人に影響を強く与えることができるポジションとして背骨のような役割を果たすところである。この背骨を鍛えておくことが、結果として組織で人を活かす近道だと考える。研修体系を構築するときにこのセンターラインに行う研修の中身をまず固めて、ここから人材育成を手掛けていくのが大切であろう。