第4章 組織と人種① ダイバーシティとは

第4章 組織と人種① ダイバーシティとは

2018年11月16日 0 投稿者: 大橋資博

前章において情報によって社内に生まれる壁や格差について述べたが、会社内のコミュニケーションを阻み、分断を生み出す要素として、「人種」という問題がある。人種とはいわゆる人類学で言うところの正式な定義の人種ではなく、社内には様々なタイプの人材がいることを便宜的に人種と表現したに過ぎないので念のため断っておく。この人種の問題は最近では「ダイバーシティ」という言葉で人事課題の大きな柱とされているが、私の感覚的には日本企業の多くがこのダイバーシティ問題についての解決能力がとても低いように感じる。また、だからというわけではないかもしれないが、ダイバーシティというと女性活用とほぼ同義で用いて、その対策のみで片付けている会社も多い。確かに問題の一つではあるし、テーマとしてわかりやすいため、ダイバーシティのメインストリームというと女性活用になるのは理解できるが、言うまでもなく女性の役員数や管理職比率を上げることでダイバーシティ問題が解決するわけではない。ダイバーシティは文字通り多様性であり、この多様な人種に対する対応が出来ないまま、「正社員」「新卒入社組」「日本人」「男性」といったような固定的な〝わが社のメインの社員“を作り出して、そこにだけ通用するルールや仕組みを作り上げてきてしまったのである。この人種問題は非常に根深い問題であると私は考えている。


さて、誰だって会社の中で居心地が良い方を望むであろう。何が居心地を良くさせるのかといえば、大きな要素は身分の保証なのだと思う。もちろん終身雇用という日本的雇用慣行はその最たるものであるが、もう少し個別具体的なレベルに落とし込むと、例えば入社時点で部長になる事が約束されているとなればどうだろうか。ある程度の失敗があっても部長まではとにかく上がるとわかれば自分の社内でのみの処し方は今と変わるのではないだろうか。同様に、例えば定年退職まで最低でも1500万円の年収が保証されているとか、一生希望の部署にいる事ができると約束されていればどうだろうか。
会社の成長のために貢献したいという気持ちだけで頑張ることが出来る人は決して多くはないであろう。何のために会社に在籍して労働を提供しているかといえば、その理由は各人さまざまであろうが、大きくは収入(Payment)だったり、地位・役職(Position)、自己実現(Personel)だったり、自分の自由(Private)だったりする。私はこれを仕事の目的における4Pと呼ぶことにしている。20年近く前の話であり、方法もいい加減だったので単なる雑談として捉えてもらいたいのだが、ある研究会のメンバーを中心にその4Pのうち、何を一番重要視しているかアンケート調査を行ったことがある。20代、30代の企業勤務者30名ほどから回答が集まったと記憶しているが、そのほとんどがPersonelとPrivateであると回答した。簡単に言えばお金や地位のために動いているわけではない、という話である。「やりがいのある仕事を与えられるならばお金や出世なんて問題じゃない!」ということだ。


ここで冒頭のダイバーシティに話を戻すと、会社にはいろんな人種がいるのであって、それはこのような「考え方」という内面的な多様性と、採用区分や学歴・職歴や性別といった外形的な多様性があり、それをすべて同じように管理することは難しい。そこで起きるのが先ほど述べたような、固定的な「わが社のメインの社員」を作り出して管理をそこに集中することである。実は人事管理上は限られたリソースに対して会社の資源を集中させることは間違いとは言い切れない。ただ間違ってはいけないのが、その資源集中の対象となる人材の選別基準が果たして会社にとって有益な人材であるかどうか、ということである。
人種は変えられない。例えば日本の大企業においては、中途採用で入った人はいつまで経っても中途採用者として扱われることが多い。それがネーミングに過ぎなければよいが、採用区分だけではなく、様々な形での人種差別が行われ、処遇に影響が出ているのが現実であろう。日本企業が取り組むべきダイバーシティの問題は非常に根深く、その解決にはもっと本腰を入れて取り組んでいかないといけないだろう。