第3章 組織を超える仕事 ―縦割りを超えていけ③―

第3章 組織を超える仕事 ―縦割りを超えていけ③―

2018年11月9日 0 投稿者: 大橋資博

もう一つ、組織の縦割りに関して重要なキーワードがある。それが「情報」である。情報は時に組織の縦割りの壁の形成を助長するが、使いようによっては組織間の壁を超えて組織全体のビジネスの成果向上に貢献する。優秀なリーダーは情報の使い方も上手であるが、情報を誤って用いて組織の足を引っ張るリーダーにふさわしくない人間もいる。組織を超える仕事とは、情報の有益な用い方によって関係者の仕事の質を向上させることともいえるだろう。情報とは仕事の質を支配する資源の最たるものと言っても過言ではないだろうし、情報を制する者は組織において高い影響力を確保することが可能である。なぜ情報がそのように高い価値を有する資源と言えるのか。それには大きく3つの理由がある。


まず1つ目に情報は交換可能なものだからである。会社の中で仕事のやり取りをするうえで社員同士が金銭をやり取りすることはないが、情報のやり取りを行うことは頻繁に発生する。仕事に関する情報であっても仕事に直接関係はしない例えば個人的な人間関係に関する情報であったとしても、それらを持つことで相手方が持っているこちらが必要な情報を引き出すことが可能となり、それによってビジネスのやり取りがより良い条件で成立するのである。逆に言うと情報に乏しい場合は正攻法かつ成功可能性の不確実な方法で仕事のやり取りを行う必要があり、その場合は通常以上に大変な苦労を強いられることもある。

次に情報は担保能力があるからである。情報を有することによって自分が行う仕事に信頼性が付与される。それによりその仕事があくまで個人ベースのものから周囲の人も含めたいわば公式で組織的な位置づけのものへとステージがぐっと上がるのである。例えば、新しいキャンペーンを行うための企画を経営幹部に説明する際に、ライバル他社の動向を既に抑えている、とか、その企画の準備段階で社長の意向を聞いてあり、その方向性に基づいて作られた企画である、といった場合である。こうした情報が後押しとなって仕事は個人レベルでぐるぐる回っていたところから一気に目指すゴールの実現段階へと前進するのである。

最後に、情報は蓄積可能なものだからである。ある有益な情報を持っている人にとって、その情報を貯めていくことで情報ストックの場所としてそれに付随する情報がさらに追加されていくのである。情報がさらに新たな情報を吸収して、雪だるま式で情報プールを築き上げることが出来る。こうして情報の一大拠点となってしまえば周りもその情報のもとに集うこととなり、自然と社内の重要なポジションに身を置くことになるのだ。


このように「情報」は、それを有する者の地位や権限を高める機能を持っているが、大切なことはそれら情報を会社全体の成長に役立つように活用する能力であって、冒頭に述べたようにその扱い方を間違っている人間もたくさんいる。例えば「情報格差」という状況を作り出すことで自己の優位性を築こうとする人材である。意図的に情報を持たない人間を作り出すことで自分の仕事の進め方を優位にしようとする行為である。わかりやすい単純な例はチーム内で共有すべき情報から一人だけ除外してメールを送るという事例をよく耳にする。そうすることによって会社に何がもたらされるのであろうか。

最近、コラボレーション型支援という言葉があるが、言ってみれば助け合いの文化を持つ組織ということらしい。助け合いの根本にあるのは信頼関係であろう。この信頼関係はヒエラルキーであったりパワーといった会社組織が具備している機能とハレーションを起こしやすく、人間の心理的契約に依存するため揺らぎやすくもある。信頼関係を構築できたつもりであっても、お互いに反する利害関係が生まれるような仕事が生じた際に、自分のことはさておき手を差し伸べることは出来るだろうか。それは非常に難しいであろう。絶対的な解決ではないが、私はリーダーやマネジャーの存在の大きいと思う。だからこそそのような立場にある人材を企業が大切に丁寧に位置づけるべきだと考えており、人材選抜のシステムの有効性を別の章で訴えたいと考えている。