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白川前日銀総裁の「日本銀行」を読む

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5年後輩の白川前日銀総裁がハードカバーで700ページを超える大作「日本銀行」を世に出した。
まさしく日銀入行から総裁までの回顧録であり、彼の人柄や苦悩が得意の学識と筆力で多くの人に「読ませる
」素晴らしい本となっており、愛妻家でネクタイの色柄にこだわった彼のにこやかな笑顔が浮かんでくる。
この本では触れられていなかったが、彼がNYの駐在参事として在任中、たまたま第二地銀協会の海外視察団の
団長として、NYに赴くことがあり、有力訪問先の日銀事務所で白川君に会い、現地の金融情勢や地銀の経営状
況を聞こうということになった。
リーマンショックが始まる前のことである。
そんなやりとりをしていたところ、突然電話がかかってきた。「すいません大橋さん、急遽NY駐在参事の職を
離れることになりました」こんな内容であった。その時は理由の説明はなかったが、後日総裁室を訪れた際
、「実は家内ががんを患い、その看病のため本部に帰らせてもらいました」との説明があった。
「そう。大変だったね。ところで奥さんはその後どんな具合?」と尋ねたところ、「おかげさまで元気になり
ました」との答えだった。
愛妻家の彼らしい人生の選択にある種の感動を覚えた。
この本でも、最初のくだりに「総裁職を離れた直後、ワイフと近くの小石川植物園をぶらりと桜見物に出かけ
た。そこで時折立ち寄る売店のおばさんから「白川さん、ご苦労様でしたね。今日のコーヒーとソフトクリー
ムはおごらせてください」と言われ、そもそもおごられるのは好きではなかったが、この日だけはワイフとも
どもご厚意をありがたく受け取った」とのほほえましいエピソードが紹介されている。
思いやりがあり、愛妻家の彼の人柄がにじみ出るくだりである。
「バブル崩壊と金融危機」「日銀法改正」「リーマン破綻」「財政の持続可能性」「金融システムの安定を目
指して」「中央銀行の使命」「失われた20年と日本の役割」「日銀の独立性とアカウンタビリテイ」「終わり
なき挑戦」など難しいかじ取りのなかで自らが体験した苦悩の選択が赤裸々に語られ、その足跡が後世に残し
た意義は大きい。
一方で、大学で経済学を選んだ経緯や日銀入行の動機、総裁就任時に三重野、福井という二人の先輩総裁から
じかにもらった「淡々と堂々とやりなさい」「風邪を引かないように」という励ましのメッセージもさらりと
披歴してくれている。
離任後は時々、同期入行の仲間達と山間のゴルフ場で気軽に余暇を楽しんでいるようで、とある週末、中央線
の列車乗り継ぎの高尾駅でばったりで出くわし、「君もゴルフ?」と尋ねたところ、恥ずかしそうに「そうな
んです」という答えが持ち前の早口で返ってきた。

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