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樹木希林「一切なりゆき」を読む

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先日、75歳の生涯を終えた樹木希林(悠木千帆)の言葉集「一切なりゆき」が出版され、書店に平積みされているので、手に取ってめくっていった。立ち読みしているうちに引き込まれ購入した。

 

話題になっているので読まれた人も多いのでは。

 

役者としては、「七人の侍」から「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」そして晩年の「モリのいる場所」「万引き家族」などなど数多くの話題作で活躍、一方でTVコマーシャルでの「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに」の名セリフが、また私生活でもロックミュージシャンの内田裕也との破天荒な連れ合いぶりが、これだけの多岐にわたる話題をかっさらってバイバイした人は初めてではなかろうか。

 

この本の冒頭でも、名優森繁久彌が弱冠20歳の彼女と共演してその才能を見抜き、鬼才勝新太郎からは「みんなお前の芝居をまねて出てきたが、お前を超えているのは1人もいない」と言われ、さらに北野武からは「普通の役者と出ると差がつきすぎちゃう」とまで言わしめた名女優だった、とのくだりがある。

 

多くの名ぜりふを残しているが、その中で私なりに気に入ったことばを挙げてみた。

 

いずれも肩に力の入らない平易なことばだが、そのくせ知らない間に心の奥底に残っていつまでも忘れられない数々である。

 

仕事のこと

求めすぎない,欲なんてきりなくあるんですから

モノがあるとモノに追いかけられます

自分で一番得したなと思うのはね、不器量というか,不細工だったことなんですよ

自分はなにほどでもない

人間でも一回、ダメになった人が好きなんです

あれは怪我の功名ではなく、ケチの功名

楽しむのではなく、面白がることよ

「もっと」「もっと」という気持ちをなくすのです

 

家族のこと

お互いに中毒なんです。主人は私に、私は主人に

存在をそのままに、あるがままを認める

あの子は存在そのものが人を癒す

 

病いのこと、カラダのこと

病気がきっかけでぐわんと変わってくることもある

もう人生、上等じゃないって、いつも思っている

がんという病気というのは、これは貴重ですよ

 

女のこと、男のこと

つつましくて色っぽいというのが女の最高の色気

男でも女でも、ちょっとだけ古風なほうが、人としての色気を感じる

 

出演作品のこと

凛として生きざまが見える女優さんはなかなかいない

どんな役でも同じ人間という体をしている以上は・・・

人間が老いてゆく、壊れていく姿というのも見せたかった

 

終わりに、喪主代理をつとめた娘内田也哉子(エッセイスト)が、参列者にあいさつしたほろりとさせる一文が紹介されている。

 

「・・・ほんの数日前、母の書庫で探し物をしていると、小さなアルバムを見つけました。

 

そのなかに、まだ悠木千帆と名乗っていた母に、ロンドンの父から届いたエアメールです。

 

この手紙に私はしばし絶句しました。普段は手の負えない父の混沌と苦悩と純粋さが、妙に腑に落ち、母が誰にも見せることなく、それを大切に自分の書棚に仕舞っていたことに納得してしまいました。

 

「おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」

 

バランスの崩れた内田家に怖気づいている私に、いつか言われた母の言葉です。・・・・・」

 

多くの話題を残して惜しまれつつ表舞台から姿を消した名女優が遺してくれたこの素晴らしいメッセージの数々に改めて感謝したい。

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