社長ブログ

書籍

山本周五郎の「ながい坂」を読む

投稿日:2018年6月25日 更新日:

山本周五郎は司馬遼太郎、藤沢周平と並んで大好きな作家である。

この三人の作品は、かつてむさぼるように読みふけり、書斎にも今もなお多くの作品が並んでいる。

この難しい時代に最も読んで教わるところの多いのが司馬遼であろうが、肩の凝らないところで気軽に読めるのが、周平と周五郎の東北生まれの二人の作品である。

周平は数年前から書棚から引っ張り出し、懐かしく思い出しながら次々と読み干し、このところはまっているのが周五郎である。

「青べか物語」

「さぶ」

「あんちゃん」

「赤ひげ診療譚」

「寝ぼけ署長」

「日日平安」

「日本婦道記」

「人情武士道」

これでは、周五郎も気軽すぎる。

そこで最近読み返しているのが、長編物である。

彼の本格的長編小説には、「樅の木は残った」と並んで「ながい坂」という作品がある。

仙台藩の重臣原田甲斐を題材にした「樅の木は残った」は有名で、かつてむさぼるように読んだ記憶があるが、それほどの人気作品にはならなかった「ながい坂」を今回新しい目で読み返してみた。

下級武士の子に生まれた小三郎は8歳の時に経験した屈辱的事件に憤り、人間として目覚め学問と武道に大いに励む。

彼の生きざまは若き主君飛騨守昌治の目に留まり、その後三浦主水正として苦しみ悩みながらも長い坂を一歩一歩踏みしめ、最後には城代家老としての要職を任される。

私生活でも,気位の高い「つる」という正妻とは当初必ずしもしっくりせず、互いに心をかよわす「ななえ」とのあいだに2人の子供を授かるが、運命のいたずらに翻弄され悲しい別れが待ち受ける。

その後、「つる」とは身も心も打ち解けるようになるが、子供を作ることはなく、孤独で厳しい人生を歩む。

全編に哀感の漂うこの作品は、ある徳川家康研究家によると「思いに荷物を背負って長い道を行くがごとき主水正の生きざまは家康を彷彿とさせ、同時に周五郎自身の目標とする人生行路のようにも読み取れる」との評があり、うなずけるところも少なくない。

-書籍

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

「鋼のメンタル」を読む

このところ、「永遠のゼロ」や「海賊と呼ばれた男」などで話題作を世に出し、一方で「カエルの楽園」や「大放言」などではとかく物議をかもしている、元放送作家の百田尚樹の「鋼のレンタル」を面白く読んだ。 「他 …

「劉邦」を読む

かつて毎日新聞でちょっと読んだことのある宮城谷昌光著の「劉邦」が、このほど大活字 の文庫本として再出版された。 かなりの長編物であるが、夏の暑さを吹き飛ばすには手ごろな物語とあって、4部作の長 編物を …

山本周五郎の「寝ぼけ署長」を読み返す

ちょっと前になるが、このブログで山本周五郎作品の「青べか物語」をご紹介したことがある。 山本周五郎は藤沢周平と並んで、かつて片っ端から読み漁った大好きな作家のひとりであり、しかも今住んでいる千葉県浦安 …

「最後の頭取」を読む

日本経済がまだ高度成長の余韻に浸り、都長銀信託というメガバンクが23行もあった頃、 日銀営業局で三井、長銀、拓銀の三つの銀行を担当していた。 今となってはいずれも姿を消しているが、都銀しんがりの拓銀は …

「会社人生、五十路の壁」

江上剛という作家の本である。 サラリーマンの分岐点というサブタイトルがついている。さほど有名ではないが、以前か ら少し気になっていた作家なので、初めて手にした。 1954年兵庫県生まれで、早稲田大学卒 …