本コラムで、司馬遼太郎、山本周五郎そして、藤沢周平が三大愛好作家であることには再
三触れさせていただいた。
先日、周五郎の長編小説「樅の木は残った」を読了、伊達藩騒動で濡れ衣を着せられる原
田甲斐の生きざまに酔いしれた後、しばらく吉野源三郎の漫画本「君たちはどう生きるか
」で頭を休めていた。
そんな折、文芸春秋社から発刊された「藤沢周平のこころ」という本が目に飛び込んでき
た。
周平ファンと愛娘遠藤展子たちが、以下のようなタイトルで、それぞれの思い出話など語
り合ったり、寄稿したりしたもので、知らなかったエピソードなどもふんだんにあり、文
庫本ながら500ページに喃々とする分厚さでなかなか読みごたえがあった。
・名作を紡ぎ続けた作家の軌跡・・・石井ふく子×遠藤展子対談、鈴木文彦ほか
・藤沢作品の魅力を徹底紹介・・・松岡和子×あさのあつこ×岸本洋子対談、宮部みゆき、
江夏豊ほか
・新たなる映像の世界へ・・・山田洋次、北大路欣也、溝畑淳平ほか
・藤沢周平の旅路・・・後藤正治
意外だったのは、阪神タイガースのはみだし投手江夏豊が松本清張から、司馬遼太郎、山
崎豊子と読み進むうちに巡り合ったのが藤沢周平で、「蝉しぐれ」「風の果て」「獄医立
花登手控」を心に残った三作品として挙げていること。
また、愛娘展子からは、自分は乳飲み子の頃に生母と死別、5歳から後妻に育てられるが
、幼稚園で「のこ(展子の愛称)ちゃんちはママハハだから大変だね」と言われ、早速母
に「ママハハなの?」と聞いたところ「そう。ママと母の両方だから二倍すごいのよ」と
いわれ、なるほどと納得し安心した。こんな太っ腹な母の性格がその後の我が家を救って
きた。こんなエピソードまで紹介してくれた。